無料で使える音楽配信代行サービス4選|制限と還元率と権利

無料でSpotifyやApple Musicへ曲を出せるサービスだけを集めました。

収益から引かれる手数料、アップロードできる数の上限、お金を受け取るまでの条件の3つと権利まわりを、サービスごとに記載しています。

「無料」には2つの意味がある

配信代行サービスの「無料」は、次の2つが混ざって語られがちです。

入口が無料:登録料も配信料もかからず、0円のまま曲を出せる。この記事で扱うのはこちらです。

出口が無料:有料プランをやめたあとも配信が残る。RouteNoteのFree移行、BIG UP!の無料移行、Amuseの解約後がこの型ですが、始めるときに料金が必要なサービスも含まれます。

無料で始められる4社

BIG UP!(日本)

公式サイト:BIG UP! / 料金プラン:料金プラン / 規約:配信サービス利用規約・配信ガイドライン(細則) / ヘルプ:よくある質問

エイベックスが運営しています。トップページに「登録料・配信料¥0」と出ていて、料金プラン表のフリープランは以下の通りです。

  • ストリーミング:受領額の70%還元
  • ダウンロード:受領額の83%還元

ただし、この83%は国内配信の数字です。配信規約の第8条(販売手数料)まで読むと、フリープランの手数料は国内のアラカルト(ダウンロード販売)が17%、国内のサブスクリプション等が30%、海外配信はアラカルト・サブスクリプション等とも30%と分かれています。

海外でダウンロードされた場合の還元は83%ではなく70%です。

ちなみに、有料のベーシックプランは商品単位の課金で、シングル(1〜2曲)年500円、EP(3〜6曲)年1,500円、アルバム(7〜25曲)年3,990円(いずれも税込)。ベーシックの還元率は全配信形態で手数料なしです。世界184カ国(地域)、40以上のストアへ配信できます。

無料の制限:トップページには「フリープランによるサービスや機能の制限もありません」と書かれています。一方、よくある質問の料金プランには次の注記があります。

フリープランでは、毎月1日を起点に、1か月につき1商品(シングル、EP、アルバム問わず)のみ申請可能です。

つまり使える機能に差はないが、申請できる数には上限があるという構成です。

無料のままでは、月に出せるのは1商品まで。ベーシックプランは申請数の制限なしと明記されています。なお、差し戻しが起きた場合、再申請分は新たにカウントされず、合計1回として扱われます。

配信開始までは、承認されてから最短3営業日(順次配信を選んだ場合)です。YouTubeのコンテンツID申請については、選んだプランに応じて収益が還元される、と案内されています。

お金の受け取り:会員が自分で「引き出し」を行う必要があり、1,000円以上から引き出せます。毎月1〜15日の申請は当月25日、16日〜末日の申請は翌月10日の振込。分配金が50万円を超えた場合は自動で振り込まれます。

有料から無料への移行で配信を続けられる設計です。配信規約の第25条で、有効期間満了の30日前までに申し出ることが求められ、決済手段が設定されていない場合などはフリープランへ移行すると定められています。移行後はフリープランの還元率が適用されるので、収益が出ている曲を放置すると手取りが減ります。

AI生成曲・商用素材:AI生成楽曲の受付可否を書いた公式ページは、今回確認した範囲(配信ガイドライン、よくある質問の「配信できない楽曲」、配信規約)では見つかりませんでした。第三者素材の商用利用については、配信規約の第19条で、著作権の譲渡や利用許諾など、配信代行に支障が出ないよう会員側が適切な対応をとる義務が定められています。第11条第3項でも、許諾の取得は会員が自らの責任と費用で行うと書かれています。素材の権利関係が不明なまま出す使い方は想定されていません。

権利:無料で使える4社のなかで、条件がいちばん具体的に読めるのがここです。配信規約の第15条第2項で、創作原盤の著作隣接権は「会員又は会員の指定する者に帰属するものとします」と定められています。

ひとつ例外があって、ISRCの取得をBIG UP!に委託した場合は、同項で「会員及び当社に帰属するものとし、当社の持分比率は100分の1」となります。権利が100%手元に残るかどうかが、ISRCを自分で用意するかどうかで変わる構成です。

独占・非独占の別については、今回確認した範囲では条文を読み取れませんでした。

RouteNote(イギリス)

公式サイト:RouteNote / 料金:Pricing / サポート:Support Hub

作品ごとにFreeとPremiumを選べる構成です。料金ページのFreeプランには次のように書かれています。

  • 「Keep 85% of your streaming and download revenue」
  • 「Unlimited artists」「Unlimited uploads」「Full access to all services」
  • 「Free forever」

無料の制限:4社のなかで、アップロード数の上限がいちばん緩いのがここです。リリース数も名義数も無制限で、「Full access to all services」とあるとおり配信先の機能差もありません。有料のPremiumとの差は、還元率(85%と100%)のほかに、審査を優先的に通すFast Track moderation、Trendsの90日分のデータ、リスナーの地域が見えるFan location insightsです。出す数ではなく、速さとデータで差がつく設計になっています。

Premiumは初年度シングルUS$10から、翌年以降は1作品あたり年US$9.99(ページ下部に「*Annual renewal fee of $9.99」の注記)。Premiumを更新しなかった場合はFreeへ移行し、配信は続きます。配信契約そのものが終わるわけではありません。

お金の受け取り:ここが無料で使うときの最大の関門です。サポートには「You’ll need to have at least $50 in your outstanding.」とあり、US$50に達するまで受け取れません。理由も明示されていて、少額送金の手数料からユーザーを守るため、と書かれています。支払いは毎月15日〜20日のあいだに自動で行われます。

参照:Is there a minimum payout amount?/Why is there a $50 threshold?

AI生成曲:4社のなかで唯一、AI楽曲の方針を明文化しています。サポート記事では、Content Recognitionの対象、韓国の提携ストア(Melon、Genie、Bugs、Flo、Vibe)、Amazonが対象外と案内されています。あわせて、審査チームから求められたら使用したサイトのリンクを提示できるようにしておくこと、倫理的な学習モデルを採用したサイトを使うこと、実在アーティストの模倣を避けること、使用したサイトの利用規約を必ず確認してからアップロードすること、通常より審査に時間がかかる場合があることが書かれています。

参照:Can I upload AI releases?

権利:どちらのプランでも権利は100%保持と案内されています。独占性についてはサポート記事が明快で、「RouteNote will never prevent you from doing anything you want with your music.」と書き、レーベルとの契約も可能だとしています。ただし、同じページに現実的な注意も添えられていて、ストアは同一リリースの重複を受け付けないため、複数のディストリビューターを使うなら同じ配信先を選ばないこと、放置するとストア側がアルバムごと取り下げる場合があると書かれています。契約上は自由でも、運用上は1作品1社が前提です。

参照:Is my relationship with RouteNote exclusive?

SoundOn(TikTok運営)

公式サイト:SoundOn / ヘルプ:Knowledge Hub

還元率について、運営元のTikTokは2022年3月の発表で「SoundOn pays out 100% royalties to music creators in the first year and 90% after that」としています。

初年度は100%、2年目以降は90%という区分です。

無料の制限:アップロード数や名義数の上限は、月5曲までです。

出金の最低金額、有料を解約したあとに自動でLiteへ移行するのか、既存曲がどう扱われるのかも、今回の確認では読み取れませんでした。無料プランが存在することだけを根拠に「解約しても残る」とは書けません。

AI生成曲:「AI曲は一律NG」とは公式に明記していません。 ただし、審査で見られるのは “AIかどうか”よりも、権利と品質のクリーン化です。

権利:利用規約は公開されていますが、権利の帰属、許諾の範囲、独占・非独占の別のいずれについても、今回の確認では条文を読み取れませんでした。

その他、SoundOn の利用規約には、「退会」の記載がありません。

Frekul(フリクル/日本)

公式サイト:Frekul / 音楽配信サービス:サービス案内 / 規約:利用規約 / ヘルプ:help.frekul.com

株式会社ワールドスケープが運営する国内サービスです。申し込みページに「登録料 利用料 ¥0」「音楽サービス各社から支払われる収益の60%を還元いたします」と明記されています。有料プランという選択肢はなく、60%固定です。

主な配信先はApple Music、Spotify、YouTube Music、LINE MUSIC、AWA、Tencent、Shazamなど。ヘルプでは21の配信先が列挙されたうえで、「この中の一部の配信先にだけ配信するなど、配信先を細かく設定することはできません」と書かれています。ダウンロードストアの販売価格、発売日、レーベル名など一部の項目も指定できません。

無料の制限:1つのリリースに入れられるのは上限30曲とヘルプに明記されています。申請できる回数の上限については、今回確認した範囲では記載を見つけられませんでした。入口のハードルは低く、mp3で申し込んでもwavに変換して各配信先へ納品されると書かれています。

ただし、機能面でひとつ大きな差があります。YouTubeのContent IDには対応していません。ヘルプに「Frekulの音楽配信サービスは、YouTubeの『Content ID』には対応していないため、登録されません」と明記されていて、無料4社のなかでここだけが非対応です。第三者の動画に自分の曲が使われたときの収益回収を見込んでいるなら、この一点で候補から外れます。

お金の受け取り:2段構えの条件があります。まず売上は各配信先で発生してから約6か月後に「Frekul残高」へ反映されます。そのうえで、残高が1,500円を超えると振込申請が可能になり、申請した時点の残高が翌月10日に振り込まれます。毎月20日時点で残高5,000円以上などの条件を満たすと自動振込の対象になります。最初の入金までの時間が、4社のなかではいちばん長い設計です。

参照:収益の受け取り方法/手数料・収益・配信価格

AI生成曲・商用素材:AI生成楽曲の受付可否は、今回確認した公開ページ(音楽配信サービス案内・利用規約・ヘルプ)では記載を確認できませんでした。市販素材の商用利用については記載があり、「曲に市販のループ素材を使用している場合、審査結果次第ではFrekulからの配信ができない場合がございます」とされています。素材のライセンス上は商用利用できる場合でも、審査で落ちうるという書き方です。

参照:市販のループ素材を使っていても利用できますか

権利:注意事項に「著作権および著作隣接権を申込者自身が保持している曲、もしくは許諾を得ていることを証明できる曲のみを配信してください」とあり、権利者であることが前提です。原盤権をどちらが持つのか、配信のためにどこまでの許諾を渡すのかを定めた配信固有の条文は、今回の確認では見当たりませんでした(公開されている利用規約は、Frekul全体の規約とカラオケ配信サービスの規約です)。

独占性については、条文ではなく運用ルールとして明記があります。「既に他社などで配信を行っている場合、重複して配信することはできません。Frekulからの配信に切り替えたい場合は、現在のリリースが停止されていることを確認してからお申し込みください」という書き方です。他社と並行して同じ曲を出す使い方は想定されていません。

無料プランの制限を並べる

サービス還元率アップロードの上限出金の下限YouTube Content IDAI生成曲の方針
BIG UP! フリー国内ストリーミング70%/国内DL83%/海外70%月1商品1,000円可(プランの還元率を適用)公開されていない
RouteNote Free85%無制限(名義数も無制限)US$50可明文化あり(一部ストア除外)
SoundOn Lite90%(原文未確認)月5件読み取れず読み取れず公開されていない
Frekul60%回数の記載なし1,500円(売上反映は約6か月後)不可公開されていない(市販素材は審査次第)

還元率の基準が各社で違うため、この表の数字は横並びの比較ではなく、それぞれの社のなかでの目安として読んでください。

還元率より出金の下限にも注意して

無料プランを比較する記事はたいてい還元率の順に並べますが、始めたばかりの時期に効くのは出金条件のほうです。

RouteNoteの還元率85%は4社で2番目に高い一方、US$50に届かないと1円も動きません。1ドル150円で換算すると約7,500円。これは手取りベースなので、85%還元で到達するにはストアからの受領額でおよそ8,800円が必要です。ストリーミング単価を1再生0.3円と仮定すると、ざっと3万回の再生に相当します(単価はストアや国で大きく変わるので、あくまで桁の感覚です)。

BIG UP!は1,000円、Frekulは1,500円。国内2社のほうが敷居は低い設計です。ただしFrekulは売上が残高に反映されるまで約6か月かかるため、下限に達する早さと、入金までの早さは別の話になります。

最初の1年で数千円が動くかどうか、という規模なら、還元率10%の差より、受け取れるか受け取れないかのほうが金額として大きくなります。

無料プラン・有料プランの簡単なまとめ

無料プランと、その社の有料プランの損益分岐を出しておくと、切り替えの判断が早くなります。以下は公開されている料金と還元率から計算した試算です。

BIG UP!:フリー(国内ストリーミング70%)とベーシック シングル(年500円・手数料なし)の差は30%。500円 ÷ 0.30 = 約1,667円。年間のストリーミング受領額が1,700円前後を超えるなら、有料のほうが手取りが増える計算です。月1商品という上限もここで外れます。

RouteNote:Free(85%)とPremium更新(年US$9.99・100%)の差は15%。9.99 ÷ 0.15 = 約US$67。1作品あたり年US$67を超えるあたりが分岐点です。

SoundOn:公式にたどれる還元率は「初年度100%、2年目以降90%」で、これはプランによる差ではなく経過年数による差です。

Frekul:有料プランがないため、分岐点という概念がありません。40%が引かれ続けます。

他とは少し違う無料サービス

公式サイト:FRIENDSHIP. / よくある質問:Q&A

FRIENDSHIP.はQ&Aに「利用料はいただいておりません」と明記したうえで、「配信収益の15%を配信手数料としていただいております」としています。還元率でいえば85%で、始めるときにお金はかかりません。

ただし、「当サービスではキュレーター審査を設けており審査通過後、FRIENDSHIP.担当者とのリリースに関する打ち合わせを経て配信開始となります」とあるとおり、審査を通らなければ使えません。誰でも今日から0円で出せる、という意味での無料プランとは前提が違うので、この記事では別枠にしました。振込は「基本的に3ヶ月に1度のターム」です。

機能面では、YouTubeについて「全てのYouTube動画を対象に楽曲が利用されている動画の収益を回収し分配いたします」と書かれています。商用利用まわりでは、サンプリングとカバーについて「サンプリング元およびカバー元の許諾があるものに限り配信は可能です」と明記されています。著作権管理は希望楽曲のみ登録可能。原盤権の帰属や独占・非独占の別、AI生成楽曲の扱いは記載がないため、審査に出す前に問い合わせる前提になります。

その他、サービス

比較検討で名前が挙がりやすいものの、開始時に料金が必要なため、この記事では扱っていません。

  • 年額型:TuneCore Japan(定額プラン年4,400円〜/シングル年1,551円/アルバム年5,225円、収益100%還元)、DistroKid(Musician 年US$24.99、1名義)、Ditto Music(Starter 年US$19)、LANDR(年US$24〜)、Amuse(Artist 年US$23.99)
  • 月額型:narasu(月110円・最低契約期間1年・月15曲まで、90%還元。買い切りはシングル2,860円、アルバム5,500円)
  • 買い切り型:CD Baby(シングルUS$9.99、アルバムUS$14.99。「with no annual fees or hidden costs」と明記)
  • 個別契約:KARENT、ZULA、The Orchard

Amuseは解約後も既存曲の配信が続く(手数料25%)設計ですが、公式の料金ページに無料で始められるプランの記載がないため、この記事の対象からは外しました。iMusicianも確認しましたが、最安が年US$29で無料プランはありませんでした。

最後に

無料で始めること自体にリスクはありません。

ただ、考えたいのは、収益が出始めたあとに移りづらい条件を選んでしまった場合と、申請数の上限、出金の下限、併用の可否です。

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